京都府立大学大学院 農学研究科 生物生産環境学専攻 博士後期課程修了
農業生物資源研究所 植物科学研究領域 植物・微生物間相互作用研究ユニット 特別研究員
日本学術振興会特別研究員(PD)
茨城大学学術研究院応用生物学野 助教
(担当:農学部、大学院農学研究科)
(兼務:東京農工大学大学院連合農学研究科)
イネ白葉枯病菌の6型分泌系のエフェクターおよび免疫タンパク質の機能解析,野洲由美子 ほか2名,2023,日本植物病理学会報,第89巻:188
アブラナ科黒腐病菌に拮抗する葉面細菌の探索,向川こひめ ほか3名,日本植物病理学会報,2022年,第89巻:11
イネ白葉枯病菌の6型分泌機構は細菌間競合に関与する,田熊万南美 ほか3名,日本植物病理学会報,2019,第85巻:312
日本植物病理学会学術奨励賞,2009年
日本植物病理学会所属
農作物の安定した生産のためには病害虫・雑草防除が不可欠です。細菌によって引き起こされる植物の病気に効果のある農薬は少なく、防除が難しいという問題があります。自然環境中には細菌を含め多くの微生物が存在しており、生息場所や栄養分をめぐって競合しています。当研究室では、細菌がもつタンパク質分泌系の一種である6型分泌系(Type 6 Secretion System: T6SS)に着目し、細菌間の生存競争を利用した植物細菌病害防除について研究しています。T6SSをもつ細菌は、この分泌装置を介して毒性のタンパク質を他の細菌や真核細胞に送り込むことで標的細胞を死滅させます。植物病原細菌の新たな防除技術として、非病原性細菌のT6SSを利用できないか検討しています。
いくつかの細菌では、抗細菌の毒エフェクターとして、細胞壁を構成するペプチドグリカン、細胞膜を構成するリン脂質、DNA などの分解酵素が見出されています。T6SSをもつ細菌は自身の毒エフェクターの活性を阻害する免疫タンパク質の発現により自己中毒を防いでいます。
(A) 非病原性の葉面細菌Xは植物病原細菌の一種であるアブラナ科黒腐病菌(Xanthomonas campestris pv. campestris :Xcc)の増殖を抑制します。写真はXccを単独培養(上段)、あるいは葉面細菌Xと混合培養後に(下段)、生育してきた細菌を滅菌水で懸濁して段階希釈したものをXccのみが増殖できる培地に滴下して培養した様子を示しています。
(B)葉面細菌Xはアブラナ科黒腐病の発病抑制能をもちます。写真はハクサイの幼苗に葉面細菌Xを前処理後にXccを接種(中段)、あるいは疑似処理後にXccを接種(上段)した後の様子を示しています(下段はXccの接種なし)。